HISTORIC SEASON 2017

Chiba JPN

新カウリングに続く2018年シーズンの新兵器「スモールテール」を導入し母国大会に臨んだTeam FALKEN. Round of 14でまさかのオーバーG(DNF)に終わるも、ワールドチャンピオンシップランキングは3位に踏みとどまる。

5月26日(土)・27日(日)、日本で4回目の開催となるレッドブル・エアレース・ワールドチャンピオンシップ2018第3戦千葉大会が千葉県立幕張海浜公園でおこなわれた。

母国大会を控え、Team FALKENのメンバーは室屋の活動拠点であるふくしまスカイパークに集まり、約2週間のトレーニングキャンプを実施していた。
レッドブル・エアレース史上まだ誰も成し遂げたことのない母国大会三連覇がかかった今大会。寄せられる多くの期待を、プレッシャーではなくモチベーションになると捉えていた室屋は、今大会から投入予定の小型の垂直尾翼を実装してホームベースで調整を重ね、万全の状態でレース会場に乗り込んだ。

レースの舞台である幕張の海上は時間によって風向が変わる。強い風が吹くとパイロンが揺れるだけでなく、波が立ってパイロンの台船も動いてしまい、レースのコンディションが厳しくなる。そのような天候の中おこなわれた予選前日のフリープラクティス1では58.284秒(ノーペナルティ)でトップと1.166秒差でゴール。

予選日に行われたフリープラクティス2・3では、前日とは反対の方向から風が吹くコンディションの中、それぞれ57.221秒(ノーペナルティ)、57.806秒(ペナルティ+2秒)を記録。ペナルティを除いて考えると、徐々にタイム自体は伸ばしてきた。

迎えた予選では、自己最速タイムとなる56.403秒でゴールし3位に。一見順調に進んでいるように思えたが、予選の内1回のフライトで珍しくFlying Too Lowのペナルティ。これは今大会投入した小型の垂直尾翼が影響していた。

垂直尾翼を小型にした分、空気抵抗が減って機体のスピードが増す。一方で、尾翼を改良したことにより、機体のコントロールは難しくなる。操縦への影響が大きい分、福島でのキャンプでフライトを重ねて導入したが、レーストラックをフライトして、狙ったライン通りに飛ぶことが難しいと判断。決勝ラウンドで安定したレースはこびをするため、元の垂直尾翼に取り換えることを決断し、予選終了後、速やかに取り換え作業を実施した。

迎えた決勝日。昨年の千葉大会の表彰台にあがった室屋の他、ペトル・コプシュタイン選手(チェコ)、マルティン・ソンカ選手(チェコ)の3選手が決勝開始前に会場上空に編隊で飛来する“パイロット・パレード”がおこなわれ、レース開始を待つ大勢の観客のボルテージを上げた。

Round of 14ではHeat4(後攻)で予選12位のマット・ホール選手(オーストラリア)と対戦。2017シーズンの千葉でもこの2人はラウンド・オブ・8で対戦しており、この時は室屋が勝利を収めた。今回、先攻のマット・ホール選手はRound of 14で最速となる55.529秒を叩き出し、室屋にプレッシャーを与える展開に。続く後攻の室屋は、第3ゲートのバーティカルターンで12Gを超えてオーバーGの判定となり、DNF(ゴールせず)となった。

室屋はこの結果を振り返り「あまり良い気分ではありませんが、今回のレースからは多くを学べました。まだ5レース残っているので、悪かったことは忘れて次のレースに集中したいと思います。ミスから学ぶことは大切です。今日のフィーリングは良かったですし、リラックスもできていましたが、機体のスピードとパワーが大きく、オーバーGを記録してしまいました。垂直尾翼がオーバーGに影響を与えたのかどうかについては分かりませんが、マットのタイムを聞いて相当プッシュした事と、垂直尾翼を急遽以前のものに戻した事と、そのどちらも影響したと思います。アグレッシブすぎたかもしれません。」とコメントした。

千葉大会を14位で終え、ポイントを獲得する事はできなかったが、辛くもワールドチャンピオンシップランキングは3位に留まった。

戦力アップを狙った新兵器は今回功を奏しなかったが、乗りこなせるようになれば全体的に抵抗は減り、タイムも良くなる。「ブダペストに向けてやるべきことがあります。より安定したセットアップを見出す、Gフォースをかけるテクニックを磨くなど、やるべきことは数多くあります」と語った室屋は、約1か月後に控えた次戦ハンガリー・ブダペスト大会に向け、気持ちを切り替え、準備を進めている。