HISTORIC SEASON 2015
Budapest HUN
2戦連続の予選2位。好調をキープ。 決勝直前のシステムトラブルで9位に終わる。
今シーズンはこれまで3戦いずれも海上に設置されたレーストラックで行われ、風の強さや向きが頻繁に変わる難しいコンディションだったが、今回パイロットたちを悩ませていたのは風では無く気温の高さだった。気温上昇はエンジンにとって一番の大敵と言ってもよく、決勝日の7月5日(日)には気温が30度台後半まで上昇して各チーム対応に苦慮することとなった。
そんななか、日本の室屋義秀はこの第4戦から導入した新しいクーリング(エンジン冷却)システム がうまく機能し、トレーニングセッションから好調なフライトを持続。予選はマット・ホール(オーストラリ ア)に次ぐ2位につけた。室屋はこれで2戦連続の予選2位。「今のマットに100%で飛ばれたら、 追いつくのは難しい」と予選1位のホールには一目置きつつも、「現時点で考えられるベストに近い タイムが出ています。トレーニングセッションからずっとフライトは安定しているので、あまり心配する 要素はないと思います」と、翌日のラウンド・オブ・14以降へ向けて、自信を口にしていた。
ところが、ラウンド・オブ・14で予選13位のマティアス・ドルダラー(ドイツ)と対戦した室屋は、1分2 秒279でドルダラーに0.207秒遅れ、敗れる結果となる。このタイムはラウンド・オブ・14全体 でも6番目に過ぎない。トレーニングセッション以来、常に上位のタイムを記録していた室屋にしては不本意な記録だっただけに、やはり原因は折からの気温上昇かと思われたが、レース後に室屋が明かした原因は意外なものだった。「(気温上昇で)全体にタイムが伸びないのは分かっていました。そこに問題はなかったのですが、離陸前にコンピューターのシステムが全部ダウンしてしまい、 結果的に手探りの状態で飛ぶことになってしまったことが予選との一番の違いです」。室屋の機体には、新しく取り入れたタブレットタイプのコンピューターが搭載され、例えばGの計算を瞬時に行って画面に表示する ことによってパイロットがオーバーGを避けるなどの対応ができるようになっている。つまり、パイロットの感覚だけに頼らざるをえない部分をコンピューターがサポートしているわけだ。
室屋の前に飛んだ2名の選手が最後のバーティカルターン(13番ゲート)でオーバーGで失格となっており、感覚のみに頼る室屋は慎重にならざるをえず、また前回の決勝でパイロンヒットで敗れていたことで確実なラインで飛行した結果、タイムを落とし、残念ながら僅差で敗れた。
この結果、室屋はまさかの2戦連続ラウンド・オブ・14敗退(最終順位は9位)に終わった。予選 2位という成績から考えれば、もどかしい展開が続いているが、室屋は悔しそうな表情を浮かべながらも「クロアチアの第3戦では予選1本目は失敗して、2本目はうまくいき、今回の予選では 1本目から完全にうまくいって、2本目はさらに攻めてどこまでいけるかテストもすることができました。 そういう意味では、一歩ずつ前進しています。トレーニングと予選でのタイムが良く、上位に行けそうなだけに悔しいですが、新機体を導入し、様々な改良を進めるなかではいろいろな問題が出てくるという事態は起こりうることです。今回はシステムトラブルがありましたが、全体としてはいい改良ができていると思っています」と、前向きに語った。