HISTORIC SEASON 2015
Ascot GBR
3位表彰台。1年半ぶりに歓喜のシャンパンファイトを味う。
レース会場のアスコット競馬場は、イギリス競馬の歴史において中心的役割を果たしてきた、言わばイギリスの伝統と文化が感じられる会場だが、今回のレースでは、皮肉なことに天候の面でも“イギリスらしさ”に見舞われた。当初、8月13日に全パイロットがアスコット競馬場にフライインするはずだったが、雨天のため中止に。翌14日には雨雲の合間を縫ってフライインこそしたものの、その後予定されていたトレーニングセッションは降雨が激しく中止となり、結局、パイロットたちは一度もレーストラックを飛ぶことなく、予選日を迎えなければならなくなった(トレーニングセッションは予選日の1回のみ)。
ようやく雨が上がり、時折日も差した予選日の15日は、それでもまだ風が冷たく、肌寒く感じられる気象条件だったが、エンジンが性能を発揮するのに大敵の条件である高温を避ける意味では、レース機にとってはむしろ好都合だった。
実際、現在の総合順位で上位につける実力者たちは、次々に好タイムを叩き出した。そんななか、室屋は1分7秒864のタイムで予選5位。第3、4戦がいずれも予選2位だったのに比べれば順位を落とす結果にはなったが、今回の予選で1分8秒を切ったパイロットは5名しかおらず、室屋本人も「順位は5位でしたが、内容としても飛んだ感触としても悪くありませんでした」と振り返る上々のフライトだった。この結果、室屋は翌日のラウンド・オブ・14で、前回のブダペストに続いてマティアス・ドルダラー(ドイツ)との対戦が決定。「リベンジになるのでいいですね。マティアスを倒して次に進みたいです」と笑顔で話し、上位進出に意欲を見せた。
こうして迎えた16日のレースデイ。室屋はまずラウンド・オブ・14で、先に飛んだドルダラーのタイムを1秒以上も上回る圧倒的な差を見せつけて有言実行の勝利。見事にリベンジを果たし、千葉での第2戦以来となるラウンド・オブ・8に進出。勢いに乗る室屋はラウンド・オブ・8でも、予選4位のピーター・ベゼネイ(ハンガリー)に快勝。今レースでの自己最高タイムとなる1分6秒706を記録する会心のフライトを見せ、昨年の第2戦(ロヴィニ)以来となるファイナル4進出を果たした。
週末を通じて冷静なフライトに徹してきた室屋だったが、今シーズン初のファイナル4進出で勝利へのプレッシャーがかかったためか、6番ゲートでインコレクトレベル(ゲートを水平に通過せず)となり初のペナルティをとられ、タイムが2秒加算されたことで念願の表彰台がまたも遠のいたかに思われた。ところが、その後に飛んだニコラス・イワノフ(フランス)、マット・ホール(オーストラリア)がともにペナルティを一度ずつ犯し、勝負は波乱の展開に。3人が飛び終わったところで室屋はホールに次ぐ2位につけ、この時点で室屋の3位以内が確定となった。
最後のポール・ボノム(英国)がノーペナルティーで圧巻のフライトを見せ。最終的に、室屋は自己最高成績に並ぶ3位でレースを終え、2度目の表彰台に立つことができた。ここ2戦は、予選で上位につけながら最終順位に結びつかないもどかしいレースが続いていた室屋だったが、上位を争える力をつけていることをあらためて証明した形となる。およそ1年半ぶりに歓喜のシャンパンファイトを味わった室屋は次のようにコメントした。
「千葉での第2戦から新型機を導入し、時間がないなか、この半年近くは詰めに詰めて準備をしてきました。その成果が出せてよかったです。表彰台に立つ準備はできていたので、同じ表彰台でも去年(第2戦での3位)とは大きく意味が違います。とはいえ、まだいろいろなテストを続けている最中で、今回も機体には不具合がたくさん出ると予想していましたし、実はいろいろ起きてもいました。1番になる(優勝する)にはまだひと山越えなければなりませんし、安定して勝ち続けるにはもう一歩前に進むことが必要だと思っています。これからは最低限ファイナル4に残れるくらいの結果を保ちながら、いろいろなことに挑戦していきたい。常に他のチームも機体の改良を進めているので、できればポールやマットに追いつくように、少なくとも置いていかれないようにしなければいけません。チームとしては今まで通りやり続けていくだけですが、今回表彰台というひとつの結果が出たことでこれから気分よく進んでいけると思います」
今回のレースで3位に入った室屋は7ポイントを獲得し11位から順位を3つ上げて8位に上昇。混戦の4位争いに加わった。