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【2025年 開幕戦レポート】シリーズ連覇に向け、進化したマシンで挑んだ初戦、その結末とは――

着実な進化を重ねて臨んだ開幕戦
2024年シーズンを制し、連覇が期待される2025年。LEXUS PATHFINDER AIR RACINGは、オフシーズンも「毎年1%ずつ速く」という目標のもと、マシンの改良を積み重ねてきた。
目に見える変化の一つは、垂直尾翼下の尾輪の小型化。空気抵抗を減らし、機体の効率性を高めている。またLEXUSの先進センサー技術を搭載したことで、エンジン各部の状態をリアルタイムで把握できるようになり、セッティングにかかる時間も大幅に短縮された。
「ものすごく楽になった」と室屋選手が語るほど、機体との一体感が向上。チーム全体の連携も深化し、テクニカルコーディネーター・中江氏は「レクサスとパスファインダーの間に垣根はなくなり、率直に意見を交わせる関係になった」と話す。

(c) Suguru Saito PATHFINDER
操るごとにリスクが増す超テクニカルコース

開幕戦の舞台は、200m間隔で並ぶ5つのパイロンが連続する、極めてテクニカルなレイアウト。約200ノット(時速370km)で飛ぶ機体にとっては、2秒足らずで次のターンに突入する難易度の高い設計だ。
スタート直後の「ビッグ8」と呼ばれる連続ターンでは、最大11.6Gもの重力加速度がかかる。室屋選手も「Gの強さに加えて切り返し動作も入り、ラインどりが非常に難しい」と語る。さらに、終盤の「スカイループ」や「ファイナルストレート」では、ターンからの加速がタイムを大きく左右する。
「安全に飛べば63秒、理論上は57秒台もあるが、58秒台が現実的なライン」と室屋選手。予選では59秒040を記録し、デビッドソン選手に次ぐ2位で通過。60秒を切ったのはこの2人のみだった。
「ベストとは言えないが、90点のフライトはできた。パトリックとは決勝で当たらない組み合わせなので、確実に勝ち上がっていきたい」と語り、予選を締めくくった。

決勝:急成長を遂げたデビッドソンとの一騎打ち
決勝の相手は、今シーズン著しい成長を見せるパトリック・デビッドソン選手。予選ポイントですでに3点差をつけられており、ここでの勝利は重要な意味を持っていた。
レース序盤は室屋選手が先行。しかし、「スカイループ」後の加速と「ファイナルストレート」での伸びでデビッドソン選手が逆転。59秒504でフィニッシュ、室屋選手は60秒600で惜敗した。

(c) Suguru Saito PATHFINDER
惜敗が示した改善の余地と可能性
「最後のターンで、パトリックにギリギリのラインを決められた」と悔しさをにじませながらも、室屋選手は冷静に次戦への手応えをつかんでいた。
エアレースでは、いかに高度と速度の“エネルギー”を保つかが鍵を握る。今回はその差が明暗を分けた。
「マシンも操縦も、まだ改良の余地と伸びしろがあると感じている。フライトの解析はすでに始めており、次はさらに精度を上げたい」
開幕戦の結果、室屋選手は23ポイントでランキング2位に。一方、優勝と予選1位の両方を手にしたデビッドソン選手は33ポイントを獲得し、10ポイントの差が開いた。
シリーズは全4戦。1戦も落とせない状況で、次戦が早くも天王山となる。
「2024年も開幕戦を落としてから巻き返した。今年も、ここからだと思っている」
第2戦決勝は7月6日(日)。逆転に向け、チームはすでに動き始めている。
