NEWS

2024.10.16

【予選レポート】2024年シーズン最終戦 渋谷デジタルラウンドへ – 室屋選手、年間チャンピオン獲得なるか

ついに2024年シーズンの最終戦となるRace 3、渋谷デジタルラウンドがやってきた。今回のトラックは渋谷駅を中心に、JR山手線の線路に沿って南北に4つのゲートが並び、その間を往復する形のレイアウトだ。

一見するとシンプルな印象を受けるが、室屋選手によると「実際に飛んでみると結構テクニカルで、難しい」という。両端で繰り返すターンの精度が重要で、狙った通りに飛べるかどうかで最終的に大きな差がついてしまうのだそうだ。

事実、予選期間の前半にフライトした6選手のタイムを見ると、暫定トップのマット・ホール選手から最下位のエマ・マクドナルド選手までの差は約5秒。トップクラスのパイロットが揃っているにもかかわらず、これまでで最大のバラつき幅だ。ホール選手とマクドナルド選手はオーストラリアの同じ場所でフライトしているので、よりテクニックの差が出ていることが分かる。

これほどタイム差が開く原因と考えられるターンの難しさについて、室屋選手は次のように語る。

「ターンの時にGをかけすぎると、簡単にオーバーGになったりスピードが落ちすぎてしまう。かといってGをかけないようにすると、遠回りになってしまう。絶妙なバランスで飛ぶ必要がある」

Gは空気抵抗によるブレーキという側面があり、ターンで小回りしようとGをかけすぎると、その分スピードが大きく落ちてしまう。再び加速できる場面は限られており、挽回できなかった分が積み重なって、徐々に遅れてしまうというのだ。これは観戦する際のポイントにもなるだろう。

予選期間の前半、室屋選手が拠点とする福島市のふくしまスカイパークでは、停滞した秋雨前線の影響で雨が続き、フライトできない日々となった。とはいえ、当初の戦略通りライバルたちの動きをじっくり観察できたので、大きな影響はなかったようだ。

雨が止んだ10月10日はプラクティスを重ね、様々なアプローチでベストなラインを確かめた室屋選手。翌11日に予選1本目のタイムアタックに臨むと、いきなり63秒655をマークし、暫定トップに立った。

予選1本目から好タイムを出したことにより、チームの戦略にも余裕が生じた。年間チャンピオン争いを見据えた決勝トーナメントの戦いに、より集中しやすくなったのだ。

現在ランキングで首位に立つ室屋選手は59ポイント。年間チャンピオンの可能性があるのは、48ポイントで2位につけるマット・ホール選手と、35ポイントで3位のパトリック・デビッドソン選手の計3名に絞られている。

ポイント差を考えると、予選上位に入りつつ準々決勝で勝ち上がって4位以内となれば、逃げ切ってチャンピオンを手にすることができる。このため、チームの戦略としては「準々決勝を確実に勝つ」ことを最優先の目標に設定し、決勝トーナメント用のタイムアタックを重ねることとなった。

まだ予選のタイムアタックをしていないデビッドソン選手の動向も気になるところだが、順調に決勝トーナメント用のタイムアタックを続けた室屋選手。非常に安定感のあるフライトで、レーストラックの特性も完全にマスターしたようだ。

デビッドソン選手は決勝用のフライトを優先して消化したようで、予選期間の最終日に65秒772のタイムをマークし、予選3位につけた。予選上位3名は、そのまま年間ランキング通りの並びとなり、室屋選手8ポイント、ホール選手5ポイント、デビッドソン選手3ポイントの予選ポイントを加算して、室屋選手の思惑通り優位をキープした状態で19日の決勝トーナメントを迎える。

19日の決勝トーナメントは、渋谷区立宮下公園4階・芝生広場とSHIBUYA Sakura Stage「404 Not Found」でパブリックビューイングが行われる。室屋選手はエマ・マクドナルド選手とともに決勝トーナメント放映終了後に宮下公園のパブリックビューイング会場で行われるステージイベントにも登壇する予定だ。室屋選手は次のように語った。

「音楽イベントもやっているので、これまでエアレースを見たことない人も見てくれるんじゃないかと思う。そういう人たちにも楽しんでもらえたら。チームも機体の仕上がりもいい状態で臨めているので、楽しみにしていてほしい」

2023年の初開催に続き、再びチャンピオンの栄冠を手にすることができるか。決勝トーナメントの様子は、10月19日(土)日本時間14時から、大会公式YouTubeチャンネルで配信がスタートする。